2010/01/24

ヴァイオリン弾きの為のPA覚え書き その2

「音の入り口、マイクロフォン」

ヴァイオリニストが、PAを必要とする規模のコンサートステージで、まず避けて通れないのが、マイク(マイクロフォン)とのお付き合いじゃないでしょうか。

マイクは、多くの方が、カラオケなどで既に何となく慣れ親しんでいると思いますが、楽器などから発せられた音(空気振動)を電気信号に変換する例のアレですね。

最近は、コンパクトなハンド・レーコーダーを活用している演奏家も多いので、「音を吹き込む、音の入り口」という感覚は、ほとんど自然に誰もが持ち合わせているように思います。

ただ、身近になり過ぎて、案外意識されないのが、「本来、マイクは振動・衝撃、温度・湿度の変化などにもデリケート」だという性質です。

何でこんな事を説明しだしたかというと、このコラム「ヴァイオリン弾きの為のPA覚え書き」の隠された大きなテーマ「ヴァイオリニストが、PAさんと仲良くなって、大事なステージで良い音をホールに響かせてもらい、結果、演奏家として得をしよう」とおおいに関係しているからです。

何が言いたいかというと、コンサート・ステージの現場では、カラオケマイクのごとく不用意に落としたり、「トントントン(はいってますか?)」的に手で叩いてみたりするだけで、「演奏家としての株が知らないうちに下がる」というリスクが現場には少なからずあるということです。

「いやいや、さすがに落としたりなんかしませんよー」と言われるかもしれないですが、無意識的にも「トントントン」タイプの人は結構いるんじゃないかな?僕はPAの仕事をしているわけではないけど、たまに遊びにいったステージ・リハだけでも、かなりの割合で目にするんです。

冒頭に「マイクは音の入り口」と書きましたが、「入り口に異常があって、万が一、元の生の音がへんちくりんに電気信号に変換されて、大きな音に拡声されてもなかなか良い音響効果に結びつかない(加工するにも余計手間がかかる)。」少なくてもPAの方々には、そういう繊細な感覚があるように感じます。

まあ、実際は、スタジオ・レコーディング用のマイク(これは非常にデリケート)でもなければ、ステージ用途のマイクでは、ある程度の乱暴な扱いにも耐える頑丈さと信頼性の高いマイクが選ばれている事が多い(実際、そういうマイクが多くの現場でベストセラー的に使われているようです)ので、必要以上にビクビクすることはありません。

また、一流のPAさんは、不思議とみんなやさしいので(人格的にすばらしいから一流なのかもね)、大抵の事は「ああ、知らないだけなんだな」と大目に見て下さるので、さほど心配することはないのかもしれません。

ただ、何事も甘えは禁物です。どんな人間関係でも甘えが過ぎるとぎくしゃくし始める事が多いのです・・・(なんちゃって)。

「郷に入りては郷に従え」ではないけれど、舞台音響の専門家たちとの共同作業の場でもある、コンサート・ステージの現場でのエチケット(礼儀作法)ようなものだと思って身につけておいても、損はしない気がします。

こうしてみてはどうでしょう?中途半端なうんちくに走る前に(だって、僕自身も含め、PAさんに専門知識で張り合おうなんて、みっともないじゃないか。確認しておくと、このコラムはPA専門知識を養う目的で書いているわけではありません)、大多数がマイクを「トントン」叩こうとも、あえて自分は「絶対に叩かない」と現場でさりげなく少数派として振る舞う。

そんな小さな事でも、もし現場で徹底してやっていれば「なんかこいつ違うかも」とその道のプロも一目おいてくれるかもしれません。わずかですが、そんな可能性も無くはないのです、この今日のはなし(なんじゃこりゃ?)。

それぞれ異なる専門分野を持ち、その現場で担っている役割に対して、お互いが「一目おく」ことができている状態、それが何より「良い関係」と呼べるのではないでしょうか。

音楽の世界に限定したことではないかもしれないですが、そういう「良い関係」が自分の大切なところで1つでも2つでも持てている人に遭遇すると「強いなぁ」と感じる事が多いように思います。

まぁ、これは僕の主観だけども、そういう人の奏でる音(コンサート)は、何か大きなモノに支えられた自信のようなものに満ちていてかっこいい。

何か、今回は精神論じみてきて自分でも疲れてきたので(本当は、オンマイク・オフマイクまで簡単にまとめたかったのですが、次回に回します・・・)、最後にPA的に例外(特別な方達)のパフォーマンスを研究して終わりにします。

まずは、僕も大好きな故忌野清志郎さんの例です。ポイントがなかなか出てきませんが(2:57以降と4:54以降に注目です。これは、ただ僕がライヴ映像を観たかっただけですね)何かの参考にしてみてください。



何か良いですね、最後ちょっと控えめに回し(PAスタッフにも「ちょっと悪いなぁ」って気を配りながら・・・一流の人はきっと何処かでそう思ってるはず。たぶんね。)つつも、オーディエンスの心も掴んでいますね。あくまで、例外的な「良い関係」が見うけられますね。気のせいでしょうか?

さて、次は、個人のパフォーマンス最優先とでも言いますか、「演奏家」と「PAさん」との「良い関係」という概念がまだ未成熟な時代までさかのぼってみた、例外的パフォーマンスです。



あ!いきなりやってますね。しかも一切の手加減無しです。マイクも青いビニールテープでぐるぐる巻です。すごいなぁー。繰り返しますが、これはあくまで例外。特別な方達です。

お復習いしておきますが「一般的に、マイクは大切に扱っていた方が無難」です。

60年代から70年代にかけて(ちなみに、この映像は1970年だと思う)は、「PAさん」にとっては、現場は戦場だったのではないかと想像してしまいます(あ、今は今で、きっと戦場ですね)。

「なんか自分は、PAさんの事もう少し考えてみようかな」って、少し優しい気持ちなれる良い動画だと思って選びました。

今の時代、「良い関係」には、お互いのちょっとした思いやりも必要なんじゃなかろうか?

以上、今回はいつにも増してひどい文脈でしたが、次回はちゃんと「オンマイク・オフマイクとは?」風にまとめますので、諦めないでください。

というか、万が一、PAなどに興味が出てきたヴァイオリニストがいたとしたら(いろんな引き出しがある事はすばらしい事だと思います。PAの延長でDTMなんかの知識を持つ人が増えたら面白いかもね)、こんないい加減なコラムを読んでいないで、ちゃんとした本を自分で探してね。

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